第42回日本青年期精神療法学会総会

会長挨拶
第42回日本青年期精神療法学会総会の会長を務めます、川崎医科大学精神科学教室の村上です。開催のご挨拶をさせて頂きます。
今回の総会のテーマは「青年期精神療法の『青年期』とこれから」としました。
人の人生に青年期があるように、治療者にも青年期があり、その治療者の臨床にも青年期があると思います。そして、学問や概念にも青年期があるのではないかと考えます。
本学会は、1980年に「青年期精神医学研修会」が開催されたのが端緒であり、毎年開催してはということになり、翌1981年の第2回から「青年期精神医学交流会」の名称になり、2000年の第18回から「青年期精神療法学会」となりました。
当時の日本は高度経済成長が進む一方、登校拒否(不登校)、摂食障害、そして境界例などの青年期特有な病態への対応が求められる中で、本学会は生まれ、発展し、一定の役割を果たしてきました。
これらの諸問題は、今なお解決には程遠く、我々臨床家を悩ませています。とは言うものの、今や、青年期の臨床は精神科医にとっても心理職にとっても研修の重要項目となり、さらに専門的な研修を提供している施設もあります。それに比べると、我が国の青年期精神療法を発展させてきた先生方は、指導や研修が十分でない中で、若さと熱意を頼りに、試行錯誤や悪戦苦闘、時には孤立無援や泥沼や地を這うような臨床をされてこられたと思います。そして、その先生方は今、徐々に引退を迎えつつあります。ご自身の臨床の苦労などについては、あまり語られない先生が多いですが、先生方の頑張りや苦労や失敗などの経験は、大変貴重なものであり、できるだけ多くの先生方と共有することは重要だと感じます。
近年の若い治療者は、難しい青年期患者を上手に「あっさり」と診るようになったと思います。それは大変良いことです。ただそれだけで良いのだろうか、そして、それを可能にした先輩方の経験の蓄積が十分共有されてないのでは、との思いが私にはあります。
この度、会長をお引き受けさせて頂くに際しては、折角なので今しかできないテーマは何かと考えました。そして、「青年期精神療法の『青年期』とこれから」をテーマにすることにしました。
本総会ではこのテーマそのままのシンポジウムを企画しました。我が国の青年期精神療法を担ってこられた先生方に、ご自身の臨床を振り返って自由に話して頂きます。シンポジストは、郭麗月先生、大高一則先生、笠原麻里先生、田中究先生、塚本千秋先生の5人の先生にお願いしました。「この先生の青年期精神療法の青年期を聞きたい」と私が思った先生方です。そして、5人の先生方のお話の後に、「青年期精神療法のこれから」について、皆様と議論をしたいと思います。この5人の中に青木省三先生は入らないの?と思われる方もおられると思いますが、ご安心ください。青木先生には特別講演をお願いしました。これだけの先生方の生の臨床のお話が聴ける機会はなかなかないと思います。
なお、一般演題については、このテーマに縛られず、青年期精神療法に関するものを幅広く募ります。
学会会場である川崎医科大学総合医療センターは岡山市中心部の繁華街にあり、倉敷市にある川崎医科大学の本学よりもむしろ交通の便は良く、飲食街もすぐ近くです。初冬の岡山を楽しみつつ、青年期精神療法を考える場として、本総会にお越し頂けることをお待ちしています。
第42回日本青年期精神療法学会総会会長 村上伸治